クツズミを顔に塗るルパン。 準備を終えて、次元と不二子に声をかけた。 「行くぜ。」 「おう!」 今日ルパンが狙うのは建築中のダム付近に埋まる宝の箱。 月夜に黒装束でワイヤーを伝って潜入を試みた。 だが、ワイヤーから一滴の滴が警察官の帽子に滴る。 警察官は空を向いたが、次の瞬間にはルパンの投げたワイヤーで気絶させられていた。 「殺しやしねぇ、しばらく眠ってな。」 ルパンは目標に飛び降り、土に埋まった鍵穴をナイフでこじ開けふたを開けた。 さらにその中に入っている宝箱をロープに吊ったその時、突然サーチライトがルパンを照らした。 「銭形!?」 ルパンは拳銃に手をかけたが、警官達の銃に撃たれて膝をつき倒れてしまった。 「殺しはせん、麻酔弾さ。後でゆっくりしとめてやる。」 そう言って銭形はルパンにかけ寄ると、宝箱がスルスルと上がり始めた。 「次元・・・、次元大介!逃がすなっ、引っ捕らえろ!」 不二子の操縦するヘリと共に次元と宝箱は去っていった。 -------------------- 脱獄のチャンスは一度 -------------------- 山の中、ルパンを乗せた護送車は一路刑務所に向かっていた。 「あっ、とうとう降ってきたぞ。」 警官の言うとおり、雷鳴と共に雨が降りだした。 「どうしたルパン、観念したか?」 「ホホー、冗談じゃねぇやい。後ろ見てみな、尾行してる奴がいるぜ。」 銭形の質問にルパンはシャアシャアと答えた。 銭形が後ろを見ると、確かに誰かがバイクでつけている。 「追っ払え!」 「はっ!!」 警官がバズーカを一発はなった。 「キャッ・・・。」 護送車を追っていた不二子はバイクから投げ出されて倒れ込んだ。 「ルパン、きっと助け出してあげるわ。」 「よしな!」 「ルパンはその気ならいつだって逃げるさ。ま、しばらく様子を見てみろって。」 「だって、あの箱の鍵はルパンが持っているんですもの。」 護送車の中で、銭形は前をのぞき込んだ。 「おい、何か見えるか?」 「いえ、何も見えません。」 「雨だけです。」 「雨に用はない!!」 言い捨てると銭形はドッカリとルパンの向かい側に座り、勝ち誇ったように喋り出した。 「無理するなよルパン。もう虚勢を張ってもしょうがない。しかしあのときのお前さんの 哀れな顔は見物だったぜ。イッヒハハハハハ・・・。」 ナメやがって、どうして本当に殺さなかったんだ。そう考えながらルパンは銭形をにらみ、 そして笑みを浮かべた。 「ところで、もしここにいる警官の中に、俺の部下が紛れ込んでいるとしたら、どうする?」 「ん?」 「たとえばさぁ、この車の運転手が俺の部下だとしたら・・・?」 「ぬ!?」 「外を見ろよ、この道黒姫刑務所に行く道とは違うと思わない?」 辺りを見回し、あわてて銭形は運転手に声をかけた。 「止めろ、この車を止めろ!止めんか、止めんかぁ!!」 刑務所の通路を歩きながら、銭形がルパンに言った。 「脅かしやがって。いいかねルパン、このム所に来る途中、 いつもの道を通らなかったのは・・・」 「・・・いつも通る道が雨のため遮断されてた・・・だろぉ?」 「・・・そう。それにあのとき運転手が車を止めなかったのは・・・」 「雨が降るとあの辺はがけ崩れが多いためでしょ?」 「・・・そう。」 「調べました。武器になりそうなモノは何もありませんでした。」 ルパンの手錠を外しながら看守が銭形に報告した。 「ふふん、こう徹底的じゃ、武器は隠せっこねぇよな。」 「いつかきっと同じ目に遭わせてやるぜ!」 素っ裸にされたルパンが、前を隠しながらいった。 もう一人の眼鏡をかけた看守がシマシマ模様の囚人服を持ってきた。 「これを着ていただく。」 「いかん!こいつはそんじょそこらの三流悪党とは違うんだ。」 銭形が看守を制止した。 「しかし、ここでは皆この服ですが・・・。」 「いや、一流悪党には特別待遇しようじゃないか。特別待遇だよ!」 「・・・というと、こっちですか?」 「うっうっふふふふ・・・。」 銭形は看守のさしだした拘束着を見て、イヤらしく笑みを浮かべた。 「こんのぉ・・・。」 「いいか、死刑執行の日まで、いっときでもこいつの独房から目を離すな! こいつはねぇ、一分もあればこのム所を脱獄する能力を持っているんだ。注意しろ!」 「はっ!」 階段を上がって長い通路を歩き、鉄の扉が開かれた。 「それっ!」 「うわっ!」 銭形はルパンを蹴り倒して独房の扉を閉めた。 「ごゆっくり。」 銭形が看守と去っていく姿を見て、ルパンは扉ののぞき窓から大声で叫びだした。 「待ってくれ!俺はルパンじゃない。ルパンに脅かされて入れ替わったんだ! ワタクシはここの警官であります。」 「この野郎!また例の悪い冗談が・・・。往生際が悪いぞ、ルパン!」 「あのぉ・・・、私は正真正銘の・・・、あのルパンじゃありません。」 銭形に直視されて、看守は弱々しく言った。 「だまされないでください。ルパンは変装の名人であります!」 「うるさいっ!今調べるから、静かに待っとれ!」 「ひどい・・・。」手にかけられた手錠を見て、看守は呟いた。 「調べてこい。」 「はっ!」 落ち着かずにウロウロうろうろしている銭形の所に所員が戻ってきた。 「警部、アレは正真正銘の看守に間違いありません。」 「うそだぁ!うそだ、だまされるなぁっ!待ってくださーい!」 ルパンの声がむなしくこだました。 「ひどい奴ですなぁ、あいつは。」 「まあ、しばらくの辛抱さ。どっちみち奴は・・・、死刑だ。」 証人席で銭形は糾弾していた。 「死刑だー。死こそルパン三世に与えられるべき唯一の判決です。 私の人生は、奴を捕まえるためにあったのです。奴は死刑だー!死刑だー!死刑ーー!!」 「判決!ルパン三世に死刑を宣告する!」 ルパン三世は処刑された。銭形の夢の中ではあるが・・・。 「うーむ・・・。」 銭形は刑務所の一室でルパンのことを考え、流れ落ちる冷たい汗を指で拭った。 「はぁ・・・。」 秋のある日、和尚が自転車で刑務所の横を通り過ぎた。 それを見計らって不二子が刑務所の塀に駆け寄り、ロープでよじ登ろうとした。 「アイタッ!」 だが、突然の銃声と共に不二子はしりもちをついていた。 次元がそのロープを撃ったのだ。 「よしなって言ってるだろ。奴はお前の手なんか借りずに、一人で出てくるさ。」 「だって、早いとこ箱の鍵いただかなくっちゃね。」 「およしよ、鍵だなんて。ルパン様の昼寝の邪魔だ。」 「俺はルパンじゃないぞ、偽物だ!無罪だ、助けてくれ〜!」 ルパンはムクリとベッドから起きて牢獄の扉の前でわめきだした。 銭形はラーメンをすすりながら、その声を聞いていた。 「見てろ・・・、奴はきっとやる。奴は必ず脱獄するぞ!」 そこまで言って銭形はフと箸を止めた。 「だが、いつだ・・・?奴は今、あの独房の中だ。まったく信じられん・・・。」 冬のある日、和尚がスクーターで刑務所の横を通り過ぎた。 不二子ははしご車を刑務所の塀に横付けにし、はしごを登り始めた。 「アァァァァァッ!!」 マシンガンの連射する音と共に、不二子は宙を舞った。 「またぁ!」 「しつこい女だなぁ・・・。」次元は呟いた。 「誰か来てくれぇ!ルパンが逃げるぞー!」 扉越しにルパンは叫び続け、看守を見てさらに言った。 「こいつだ、こいつがルパンだ!来てくれぇ、捕まえろー!」 「バカ、バカ!!」 看守の罵声を無視して、さらにルパンは叫び続けた。 「俺はルパンじゃな〜い!!」 ストーブの前を落ち着かない様子で往復しながら、銭形はその声を聞いていた。 「なぜだ・・・、なぜ奴は叫ぶばかりで逃げようとしない?もう半年近くなると言うのに・・・。」 「逃げられないんですよ。こんな厳重な警備は世界中探したって、ありゃしません。」 「バカモンッ!」 銭形は看守に向かってつかみかかった。 「俺は奴のことを知り尽くしている。困難があればあるほど奴は燃える。メラメラとな!」 だがストーブの火が移り銭形のコートもメラメラと燃えだしていた。 「本当に見事な奴なんだよ!あ〜ちっ!!」 春のある日、和尚がダットサンで刑務所の横を通り過ぎた。 クレーン車が塀の横に掘られた穴から不二子をつり上げた。 「きゃあ!」 「よしな、無駄だよ。」次元が不二子に言った。 「フンッ!」 獄中のルパンの頭に、外から舞い込んだ蝶がとまり、ルパンの顔がほころんだ。 銭形は窓から、空を舞う蝶を眺めていた。 「もう春か・・・。」 「さすがのルパンも観念したようですな。」看守がルパンに言った。 「バカモン。奴を誰だと思ってるんだ!ルパン三世だぞ!俺が・・・、 この俺が人生をかけて追い続けた男だ。」 「まるで警部はルパンに脱獄して欲しいかのようですな。」 銭形はソファから立ち上がった。 「何ッ!!バカを言うな。油断するなと言ってるんだ。」 再びソファについて、銭形はため息をついた。 「フゥ・・・。」 再びセミが鳴く夏、和尚が真っ赤なスポーツカーで刑務所の横を通り過ぎた。 警務初日かずくヘリコプターを次元の対空射砲が狙い、爆発と同時にパラシュート姿の 不二子が飛び出した。 「もう、一体どういうつもりなの?このままじゃ、箱は開かずじまいよ!」 次元は意に介せずといったふうに背を向けた。 「わからずや!」 扇風機が首を振る中で、銭形はただルパンのことを考えていた。 −もう間もなく・・・、確実にルパンの死刑は執行される・・・。 銭形はイスから立ち上がって頭を抱えた。 「ルパン・・・、何てこった、ルパン!信じられん。もう一年になろうとしているのに、 一度も脱獄を企てんとは!!次元・・・、そうだ!次元大介はどうしたんだ。次元! ルパンを見殺しにする気か!?もう誰でもいい!何とかしてくれ!このままでは納得がいかん!」 −まさか・・・、本当に処刑されちまう気じゃ、あるまいな− 次元はそんなことを考えながら、ふと和尚のスポーツカーに目をやった。 冷たい音を立てて、刑務所の通路の扉が開けられた。 銭形と和尚、そして二人の看守がルパンの独房の前にやってきた。 「開けろ!」 「はっ!」 −いよいよ今日が最期か・・・− 銭形はそう考えながら背を向けているルパンに近づいていった。 「一年間ご苦労様だったな。それにしても元気そうじゃないか・・・、ルパン。」 ルパンは振り返って怒鳴った。 「気をつけろ!」 「あ?」 「この銭形警部こそが本物のルパンだ!」 「ルパン、キサマ狂ったな。」 「へへへ・・・。」ルパンはニヤリと笑って見せた。 「和尚、あと三十分で奴の刑は執行されます。今日が最期、お願いします。」 「ん・・・、ごめん。」 そう言って和尚はルパンの独房に入っていった。 「またかい。この一年、毎日のようにツラを出してやがる。見飽きたぜ!タコ坊主!」 ルパンのぼやきを無視して、和尚が言った。 「どうじゃ、少しは仏の御心が分かったかな?」 その声にルパンはハと振り返って言った。 「次元・・・!?」 次元は外に漏れぬよう小さな声でしゃべった。 「ルパン・・・、一体どういう気なんだ?」 「次元か・・・。いや、長いつきあいだったが、いよいよおさらばって事になったぜ。」 次元はたもとに手をやってマグナムをとり、ルパンに渡そうとした。 「さあ。」 しかしルパンは銃を受け取ろうとせずに立ち上がり、背を向けた。 次元はいぶかしがってたずねた。 「おい、何を企んでいるんだ?」 「何も企んじゃいないさ。すばらしいゲームを楽しんでいるんだ。処刑か脱獄か・・・、 万に一つの失敗も許されないきわどいゲームをな・・・。」 「どうしたルパン、気でもちがったのか?」 ルパンは笑顔で振り返った。 「正気だよ。」 「無茶だルパン、素手じゃなにもできん!」 「次元・・・、やれるかやれないか俺の好き勝手にさせてくれ。」 次元はあきらめたふうに銃をしまって、言った。 「よぉし、わかったよ。お前は生まれつき贅沢なんだよな。好きにするさ。」 「ありがとう。あと何分だ?」 次元は腕時計に目をやった。 「うーん、あと二十分ほどだな。お前が死んじまったら、 銭形のダンナも生き甲斐を失って悲しいだろうぜ。」 看守が入り口に立って言った。 「時間ですが!」 次元は再び和尚に成りすまして言った。 「ま・・・、御仏の慈悲におすがりなさることじゃ。 成仏しなされ。ナムアミダブ、ナムアミダブ・・・。」 和尚に成りすました次元は銭形の所へ行き、言った。 「すみましたぞ、警部。」 「何か他に変わった様子はありませんでしたか?」 「うーん、御仏の心が通じたようですな。ナムアミダブ、ナムアミダブ、ナムアミダブ・・・。」 銭形達が独房から離れようとしたとき、ルパンの声がひびいた。 「和尚!!」 「私をお呼びかな?」 「和尚、タバコくれよ!」 「警部、よろしいかな?」 和尚の問いに、銭形は黙ってタバコをさしだした。 和尚は扉越しにルパンの口にヨレヨレのタバコをくわえさせ、マッチを擦った。 タバコの火があてられてルパンの表情が少し変わり、 それを見て和尚に成りすました次元もニヤリと笑った。 銭形達は腕時計で迫り来る死刑執行の時間を見て、去っていった。 −ついに俺の死刑執行か・・・− 再び一人になって、最期の一服を終えたルパンは靴でタバコをもみ消して立ち上がった。 ルパンが体をもぞもぞと動かすと、拘束着が内側から刃物のようなモノで切られていった。 「奴ら、身体検査の時、一つだけ見落としたところがある。 この爪だけがカミソリになっていることをな!」 ルパンはカモフラージュのため破れた拘束着をもう一度はおり、一年ぶりに自由になった右手の爪で 長く伸びたひげをそり始めた。 「無理をすれば、この一年間いつでも脱出できた。だが俺は待った。最後の一瞬にかけたんだ。 生と死の境目・・・ってところにな・・・。」 ヒゲを半分ほど剃った頃に、ルパンの様子を見に銭形が戻ってきた。 「おい、ルパン。ちょっとこっちへ来い。早くせんか。何をしてたんだ?」 ルパンはまだヒゲを剃っていない側の顔を銭形に向けて言った。 「いやいや、別に。ところで警部、ヒゲを剃ってくれ。。このままであの世に逝ったら、 閻魔大王がビックリしちゃうもんな。」 「フフン、殊勝な心がけだ。」 それを聞いていた看守が銭形にこぼした。 「ああ言ってはいますが、奴はこの一年ヒゲを剃ることをひどく嫌がっていたんであります。」 「聞いてやれ。それが法の慈悲ってもんだ。」 「はっ!」 しばらくして、ひげ剃りを持って看守がルパンの独房へ入ってきた。 「ほら!」看守がルパンのぼさぼさ頭をはたくと、髪が崩れ落ちて中から毛布が出てきた。 「!?」 「静かにしな。」 ルパンが看守の背後から首筋に刃物になった爪を突きつけた。 「いいか、少しでも騒いでみろ。ここで静かにさせてやるぞ。俺の言うとおりにしてもらおうか。」 一室で銭形は呟ていた。 「ああ、これで奴ともお別れか・・・。」 「は?」 看守の声に銭形はあわてて言い直した。 「あ、う〜ん、これで世間も静かになるってもんだ。」 「よかったですな。」 「ルパンが脱獄した〜!!」 突如、別の看守の声がひびいた。 「・・・やった、ついにやった!!」 銭形は部屋を飛び出し、ルパンの独房へ向かった。 「ん、何だ。いるじゃねーか。」 困惑した銭形に看守が応えた。 「また例のように騒ぎ始めたんです。」 髪とヒゲがボサボサのままのルパンがわめいた。 「警部、謀られたー!」 「ケッ!」 「だまされるな、奴の計略だ!」 「いい加減にしろ!」 「違う、この男は偽物だ!」 看守がシャアシャアと応えた。 「また同じ事を言ってます。」 「ケッ、お前は最低品だよ。ガッカリさせられたぜ。」 「ウゥウゥ・・・。」 ルパンは泣き崩れた。 そこへ看守が二人入ってきた。 「時間です。」 「うむ。」 二人の看守はルパンの腕をつかみ、処刑場へと引きずっていった。 「待て、待って、いやだあ!間違ってる。もう一度調べてください。もう一度調べてくれぇ!!」 ルパンの声がむなしくひびいた。 その様子を見ていた看守が銭形に言った。 「警部、あなたの念願通り、ついにルパンも毒ガスのえじき・・・というわけですね。」 「何ぃ!?」 銭形がにらみつけると、看守は顔を背けて帽子の唾で目を隠した。 「謀ったな、ルパン!」 銭形は拳銃を向けて続けた。 「ここは電気イスはあるが、ガスはない。」 「・・・えっ!?」 「ここの者なら誰でも知っているはずだ。残念だったな、ルパン。もう一息のところで・・・。」 すると看守に化けたルパンが体を震わせて笑った。 「ヌフフフフ・・・。とすると、今、電気イスに座ってるのは誰かな?」 「何ぃ!?あ・・・あ・・・、その死刑待ったぁ!!」 銭形は大慌てで処刑場へ走っていった。 ルパンは看守の格好で、何くわぬ顔で刑務所の門をくぐり外で待つ次元に話しかけた。 「よぉ、次元。」 「よぉ、ごくろーさん。」 「最後のタバコは胸にしみたぜ!」 ルパンはSSKの鍵を回し、アクセルを踏んだ。 「不二子の奴は、どっか行っちまったぜ。・・・多分、待ちきれなかったんだろうなぁ・・・。」 助手席の次元が呟いた。 ルパンが生還したことを知らない不二子は、ルパンのワルサーを持って海を前に立ちつくしていた。 「かわいそうなルパン・・・、とうとう死んでしまったの・・・。ずいぶん意地悪したけど・・・、 ホントは私にとって宝の箱なんてどうでも良かった・・・。大切だったの・・・、 あなたが一番・・・。本当に・・・。」 不二子はワルサーを海へ投げ捨てた。 ルパンはアクセスを踏みながら次元に言った。 「確かに一年は長かった・・・。抜け出そうと思えばできたかもしれん・・・。しかし俺はあのとき、 屈辱感を味わったよ。俺の誇りが傷ついたんだ。アレが実弾だったら俺はもう死んでいたわけだ。 俺はあの銭形に土壇場で俺と同じ屈辱を感じさせてやりたかったのさ。」 少し間をおいて、ルパンがたずねた。 「ほんで・・・、お宝はどこに隠したんだ?」 「すぐそこだ、あの山の中腹の所だ。」 二人目的の地へ到着したものの、次元が立入禁止の札を前に困惑している。 「あれっ?」 「どうした?」 「一年前森だったんだぜ!」 ルパンはサイレンの鳴り響く中、あわてて走り出した。 「急げ!!」 スピーカーが「立ち入らないでください。これからダイナマイトを仕掛けます。 立ち入らないでください、これからダイナマイトを仕掛けます。」とがなり立てた。 二人はただひたすら走ったが、サイレンが鳴り終わると同時にダイナマイトが爆発した。 あわてて二人が身を伏せると、土砂に混じってチャリンチャリンと金属音がひびいた。 頭を上げると、目の前に小判が舞っていた。 二人は体を起こして、あぐらをかいた。 少し放心状態になりながら二人は顔を見合わせると、ルパンはおもむろにふところから ヨレヨレのタバコを取り出して次元に加えさせ、マッチを擦った。 次元はタバコをくわえたままニヤッと笑った。 ルパンはマッチの火を吹き消して、ニヤッと笑いながら言った。 「御仏の慈悲だ。」 「ん?フフフッ・・・。」 「あっはっはっは・・・。」 二人は反っくり返って笑い、立ち上がって笑いながらかけていった。